おうちでそばを楽しみたい(後編)
お家でおいしいそばが食べたい。
こだわりはじめればキリがなさそうだけれど、かといってなんでもいいというわけにもいかない。
そんないわゆる“お家そば”における、手軽さとこだわりとのいいバランスを探っていきたいということではじめた前回は乾麺のそば(干しそば)を3種類いただいてみました。
今回はその続きとなります。
そばに限らずこういった冷たい麺類の場合、茹でるのにもぬめりを取るにも冷してしめるにもとにかくたっぷりの水が必要となりますが、マルチピュア浄水器によって安心してたくさんの水が使え、香りや風味の邪魔もしてこないので純粋にそれぞれのそばの味わいの違いを感じることができます。
だからといって、決して蕎麦通ではない素人そば好きの私自身がそばそれぞれの繊細な味を見極められているかどうかはまた別の話で、そのあたり甚だ不安ではありますが、、、今回もなるべく注意深くそれぞれのそばをいただいていきます。
生麺のそば
生麺タイプも要冷蔵のものや保存期間が比較的長めの密封された半生のもの、中にはすでに茹でられているゆでそば、さらにそのゆでそばを冷凍したものまで実にさまざまな種類が市販されています。
今回その中からピックアップさせてもらったのは4種類。
写真左から、蕎麦通の生そば(株式会社おびなた)、奥出雲生蕎麦(有限会社本田商店)、門前茶屋深大寺生そば(シマダヤ株式会社)、石臼挽きそば(シマダヤ東北株式会社)です。
それぞれレシピに忠実に茹で上げていきます。
蕎麦通の生そば
記載された茹で時間 4分
いわゆる半生タイプのなまそばで、賞味期限は比較的短いですが常温保存できます。
たっぷりの水を沸かした寸胴に入れていきますが、なまそばならではの弾力ある手触りにこの時点で期待が膨らみます。
タイマーで計ってきっちり茹で上げたら、すぐさまざるに移し、流水でやさしくもみ洗いしてぬめりを取り、そのあと氷水に潜らせてしめていきます。
半透明でつややかな茹でたてをさっそく。
うん、おいしい!
やはり生そばならではの食感があります。
ツルツルシコシコでのどごしがとてもいい。
風味はほんのりですが、ひとくちごとにみずみずしくて食べごたえも感じます。
以前にいただいた印象では干しそばに比べてなまそば全般にコシが弱かったように感じていたのですが、今回氷水でしっかりしめたことがよかったのか、なまそばらしいコシも十分感じられました。
他のそばと比べてもさっぱりしているので料理との相性もよさそうです。
奥出雲 生蕎麦
記載された茹で時間 3分
こちらも常温保存できる半生タイプです。
出雲そばは関東のそばと比べ気持ち幅太めで濃いそば色をしています。
以前出雲のお店で本場の出雲そばをいただいたことがあるのですが、この奥出雲 生蕎麦はまさにそれを思い出す食感。
ツルツルというよりはワシワシといただけるのどごしでコシもあります
おそらくとろろそばなどにしてもそばが負けない強い風味で生感もあり、いわゆる昔ながらの田舎そばを思わせるしっかりとしたそばです。
お肉や夏野菜など、あれこれトッピングするのにもよさそう。
そばはこれでないと、といったファンの声が聞こえてきそうな伝統的で特徴あるそばでした。
門前茶屋 深大寺生そば
記載された茹で時間 2分から2分半(今回は2分15秒)
東京そばの名所、深大寺のなまそばで要冷蔵です。
茹でる前のなまそばはより水分を含んだずっしり感があり、茹で時間も他の2つの半生タイプに比べ短めです。
こちらもしっかりぬめりをとって氷水でしめていきます。
透明でつややかな仕上がりで、のどごしがとてもいい。
そばの風味もしっかり感じられます。
お店でいただくそばと近い、硬すぎず柔らかすぎずの絶妙なコシ。
ひとくち目に若干の酸味を感じましたが、すぐ気にならなくなりました。
要冷蔵で賞味期限も短いため、常備しておくには不向きですが、風味や生感、コシ、後味などどれも水準高くとてもおいしかったです。
石臼挽きそば
記載された茹で時間 1分
プライベートブランドの、すでに茹でてある冷凍食品のそばです。
茹でるというよりは解凍に近いのでしょうか、何しろ1分で茹で上がるほか、電子レンジの解凍もできるようです。
十分に氷水でしめます。
ゆでそばということで危惧していた歯応えは意外にもしっかりしていて、のどごしもなかなかです。
風味やつゆの絡みは控えめであっさりといただける印象。
使い勝手は抜群なので、献立の中にちょっとそばも欲しいといったときにとても便利そうです。
総じて生麺タイプは氷水でしっかりしめることによって歯応えが生まれ、お店でいただくそばの食感に近づきました。
乾麺タイプ(干しそば)がいわゆる蕎麦粉感のある口当たりだったのに比べ、生麺タイプは4種類それぞれ特徴あるのどごしを感じられました。
蕎麦粉の風味かのどごしか、このあたりは好みが分かれるところではないかと思いますが、パッケージに記載されてた茹で方を守ることによって乾麺、生麺それぞれのおいしさが楽しめます。
あえて選ぶとするならば、のどごしや食感で選ぶならなまそばを、蕎麦粉感を選ぶなら干しそばを、といったようにその時々で使い分けていくのがいいのではと思いました。
手打ちのそば
最後はご家庭でのそばの究極ともいえる手打ちそばです。
そりゃ自宅でそばが打てるなら、ことおいしさにおいてこれに越したことはないだろうとは思いますが、当然手軽さとは対極にあるかと思いますし、そもそもそば打ちの技術や経験がない私にとっていきなりそば打ちはハードルが高すぎます。
そこで今回はまずそば打ちへの第一歩、そば打ちを知って学ぼうということで、そば打ちのできる友人にお願いして、実際に家でそば打ちを披露してもらいました。
本格的なそば打ちの道具と名店から譲っていただいた蕎麦粉と打ち粉を持ち込んでもらいました。
水はマルチピュアの水を使用します。
少しづつ加水して丁寧に蕎麦粉と合わせていきます。
ひとつにまとめたらこれまた段階に分けて丹念に練っていきます。
ひとつひとつの所作に無駄がなく美しいので、見てるだけで楽しい。
器用に四角形に伸ばしていきます。
専用の蕎麦切り包丁で細切りしていきます。
打ちたてをさっと茹で、水で洗い締めていきます。
そばつゆの出汁はかつお節と昆布で合わたものを用意し、そばの風味に寄り添えるうす味に仕上げました。
打ちたての手打ちそば完成です!
透き通るような透明感、繊細でさわやかなそばの香り。
心づくしに感謝しつついただいていきます。
おいしい!
予想はしていましたが、香り、風味、食感、コシどれもが別次元の出来栄えです。
これを“お家そば”のスタンダードにしてしまうのはある意味危険なのではと思う、見事な手打ちそばを堪能させてもらいました。
あくまで今回はそば打ち見学ということもありただただ友人の技に感心するばかりだったのですが、自分で打つのであればやはり今一度しっかり各行程を把握して習得していかねばならず、そうなると道具も蕎麦粉もこだわりたくなるし、道は深く険しそうです。
それでもいつかは自分でそば打ちもやってみたいと思ってしまう、感動の手打ちそばでした。
手軽なものから本格的なものまでそれぞれのよさがある“お家そば”の世界、いかがだったでしょうか。
こんなにあれこれいただいておいてなおまたすぐ食べたくなるのも、素朴な味わいのそばだからこその魅力でありまして、今回紹介しきれなかったさまざまなそばについても、この夏またひとつひとつ探訪していきたいと思っています。
種類豊富で楽しいお家そば、ぜひお試しください。