紅茶を淹れる朝 (前編)
薄いピンク色から若々しい緑色へと徐々に木々がグラデーションしていくこの時期は、寒暖差はあるものの寒すぎず暑すぎもしない、一年の中でも特に過ごしやすい季節です。
その気候に従って冬場に比べ朝もずいぶん起きやすくなりましたが、どんな季節であってもまだ眠いものはまだ眠いもの。
頭と身体起こすためには、顔を洗ってからまず飲むその日最初の水分、目覚めたばかりの身体に染み渡らせる“起き抜けの一杯”が欠かせません。
コップ一杯の水にはじまり、お茶や健康飲料、ジュースだったりと人それぞれにこの“起き抜けの一杯”があるかと思います。
時期によっても変わりますが、私の場合は紅茶かもしくはコーヒーがそれにあたります。ポットにお湯を沸かして、紅茶ならティーバッグ、コーヒーもごく簡単に淹れたものをマグカップでいただきます。
茶葉やコーヒー豆、使う機器や淹れ方など、こだわればこだわったぶんおいしくなりそうで興味はあるものの、せわしい朝における手軽さとのトレードオフで、これまで特に紅茶に関してはティーバッグのストレートティーを愛飲していました。
慣れ親しんでいるし満足しているけれど、機会があればあまり知らない紅茶の世界にも触れてみたい。
出来そうな範囲ならちょっとだけ手間をかけてみたい。
ティーポットのエレガントさに漠然と憧れを感じている。
ということで今回はティーポットを使った“紅茶のある生活”にトライしてみました。
とはいっても、紅茶の文化は世界中で長い歴史を経て育まれてきただけあって、ちょっと調べただけでも世界各国実にさまざまな紅茶文化があり、作法や工夫など実に幅広く奥も深そうでした。
それら深淵にもいずれは触れてみるとして、今回はその入り口としてまず気軽にティーポットで紅茶を楽しむことからはじめてみます。
準備として耐熱ガラスのティーポットとグラス、茶葉はTwiningのイングリッシュモーニングを選びました。
初心者の私でも耳にしたことのあるダージリン、アールグレイ、セイロンなどの他にも実にさまざまな種類の茶葉があり、それぞれに香りや味の特徴があるのですが、朝にいただくということで単純に名前で選んでみました。
待ち遠しくもいい時間
まずはストレートティー(ホット)から。
いくつかのWebの情報を頼りにまずはシンプルに淹れてみます。
紅茶に使う水は酸素が多く含まれているものがいいそうで、ミネラルウォーターや汲み置きの水ではなく、浄水器から勢いよく出して酸素を取り込んだものを沸かします。
沸騰し切ってしまっても酸素がなくなってしまうのだそうで、気泡が大きくなって波打ってきたら火を止めます。
ティーポットに入れる茶葉の量は好みにもよりますが一杯分でティースプーンに山盛り1杯位とのことで、お湯を700mlぐらい入れたティーポットに今回は2杯入れてみました。
蒸らし時間は3〜5分で、これも茶葉によって違うようです。
今回は5分計って待ちましたが、その間もティーポットからとてもいい香りが漂ってきます。
待ち遠しくもいい時間です。
できあがり、ということでカップに注ぎ、さっそくいただいてみました。
特別な何かをしたわけでもないのにこれがとてもおいしかったです。
茶葉の種類によるところもあると思いますが、いつも飲んでいるティーバッグの紅茶と比べて明らかに香りが豊かで、苦みや渋みは控えめ、全体的なバランスのよさを感じました。
茶器の特性に加えて、しっかり蒸らしの時間を計って管理したこともよかったのではないかと思います。
実際のところこれだけなら手間というほどの手間はなく、それでこの雰囲気とおいしさなら時間あるときはどんどん日用していきそうです。
思い描いていたあのチャイ
続いてはチャイ風を試してみます。
チャイはいわゆるインド式紅茶で地域ごとに多種多様なスパイスが使われ、淹れ方も様々ですが、今回はシナモンとしょうがを使って簡単に淹れます。
鍋に100mlの水を入れて、シナモンスティックを3、4つに砕いたもの、しょうがふた切れを入れ、中火で沸かします。
沸騰後、これに茶葉2さじを入れて1、2分煮出します。
このあと砂糖2さじと牛乳400mlを入れて、弱火にし、時々混ぜながら5分ほど煮たら完成。
シナモンを先頭に、紅茶、しょうが、ミルクそれぞれの香りが絡み合った複雑でいい香りがキッチンに漂います。
お味はというと、これでも充分に思い描いていたあのチャイになっていました。まろやかでありながら刺激的でほんのり甘く滋味。シナモンとしょうがの風味もちょうどよくて、とてもおいしかったです。
ストレートティーに比べると材料的にも手順的にもひと手間かかるものの、こんなに簡単にカフェでいただくチャイに近づくことに感動し、後日さらにカルダモンという、これまたチャイでは定番のスパイスを仕入れ、再度つくってみました。
カルダモンの特徴的な爽やかな香りが加わってさらに複雑で本格的な仕上がりになりました。
これにさらにクローブを加えるとチャイの基本スパイスとなるようで、これらスパイスとしょうがが粉末になってひとつにまとめられたチャイスパイスというお手軽なものもあるようです。
そんなわけで、思っていたよりも手軽にティーポットで紅茶を楽しむことができました。
ティーバッグにはティーバッグのよさがありますが、たまにはこうしてティーポットを使って茶葉で淹れて、ゆったりと朝を過ごすのも豊かでいいな、と思いました。
そのためにはただひとつ、朝早く起きる、という厄介な問題をクリアしなくてはなりませんが・・・。
今回はホットティー編でしたが、これからの季節は冷たい紅茶も楽しみたいということで、次回はバリエーションをいろいろ試してみたアイスティー編です。