理想の杏仁豆腐を追い求めて 前編
アガーの存在
前回、葡萄を思う存分楽しませてもらった際のラストに4種の葡萄のゼリーをつくりました。
アガーというゼリーの素を使ったことによって透明度が上がり、見た目にもみずみずしいスイーツになったのですが、このとき初めて使ってみたアガー、透明度だけでなく口どけや後味もとてもよく、ゼリー好きとしてはとても気になる存在となりました。
アガーは、海藻から抽出物する食物繊維やマメ科の種子から抽出する多糖類を原料とする植物性の凝固剤です。
これまでお家でゼリーといえばほぼゼラチンを使っていましたが、これは動物性。
アガーとゼラチンの違い、またアガーと同じ植物性の凝固剤である寒天との違いも気になります。
そこで今回は中華料理の代表的なスイーツである杏仁豆腐をこれら3種類のゼリーの素を使って実際につくってみることにしました。
凝固剤の種類と濃度それぞれの固さと食感を正確に比べるため、杏仁豆腐のベースとなる杏仁豆腐液の濃さは変えずに6種類の杏仁豆腐をつくっていきます。
凝固剤それぞれに溶ける温度や溶かし方に違いがあるため工程は少し異なりますが、パッケージに記載されている定量の水分量となるものと、その1.5倍の水分量となるものが同じ杏仁豆腐液の濃さとなるように調整しました。
味の繊細な違いを確認したい実験のため、こういうときマルチピュア浄水器の雑味のないお水を使えるのがうれしいです。
理想の杏仁豆腐
これまでそれこそ中華料理店だったり、スーパー、コンビニなどで販売されているものだったりといろいろな杏仁豆腐をいただいてきまして、すっかり気に入ってなんとなく家でつくってみたりしたこともありましたが、食感がイマイチだったり風味が弱かったりして思うような杏仁豆腐にはたどり着きませんでした。
いろいろと調べてみまして、理想の杏仁豆腐とするには、固さ(食感)、甘さ、風味、濃さのそれぞれにどうやらポイントがあることがわかりました。
そこでまず今回固さ(食感)に焦点を絞って探っていくため、パッケージに記載されているものやネット上のさまざまなレシピを参考にして、凝固剤の種類と濃度別につくって食べ比べてみます。
【材料】
ベースとなる杏仁豆腐液
水 250ml
牛乳 250ml
グラニュー糖 40g
杏仁霜 大さじ2
シロップ
水 100ml
グラニュー糖 30g
レモン果汁 少々
杏仁霜 5g
杏仁霜とはあんずの種子の中にある仁やその他を粉末状にしたもので、独特な甘い香りと風味を加える杏仁豆腐に欠かせない食材だそうです。食材専門店などの他、通販などでも購入できます。
ゼラチン編
水50mlで粉ゼラチン5gを溶き戻す。
杏仁霜(大さじ2)とグラニュー糖40gを混ぜ、水200mlで2回に分けて溶く。
杏仁霜がダマにならないようよく溶かしたら牛乳250ml加える。
中火で火にかけ、沸騰直前に火からおろし、溶き戻したゼラチンを加えて混ぜ溶かす。
半量取って(定量用)、もう半量にここまでの杏仁豆腐液を125ml加えてゼラチンの濃度を薄める。
粗熱がとれたらそれぞれ器に入れ冷蔵庫で冷やす。
寒天編
水250mlで寒天粉4gをよく溶かす。
杏仁霜(大さじ2)とグラニュー糖40gをよく混ぜておき、これを加えて混ぜる。
さらに牛乳250ml加えて混ぜ合わせ、火にかける。
約2分間沸騰させて煮溶かす。
半量取って(定量分)、もう半量に杏仁豆腐液を125ml加え、再び火にかけ、もう一度沸騰したら火を止める。
粗熱を取り、それぞれ器に入れて冷蔵庫に。
アガー編
アガー粉10gとグラニュー糖40gに杏仁霜をよく混ぜる。
水250mlを数回に分けて加え、混ぜ溶かす。
牛乳250mlを加えて、火にかけ、沸騰して1分さらにかき混ぜてから火を止める。
半量をとって(定量分)、もう半量に125mlを加え、混ぜ合わせて火を止める。
粗熱がとれたら器に入れて冷蔵庫に。
固まるまでにかかる時間はそれぞれの凝固剤や濃度によって違うため、ひと晩待つことにしました。
出来上がったものがこれです。
見た目ではどれがどれかまるでわかりませんが、左下がゼラチン、中央下がアガー、右下が寒天で、上はそれぞれの杏仁豆腐液1.5倍量のものです。
シロップをかけて、さっそく食べ比べていきます。
寒天定量
昔ながらのしっかりとした舌ざわりでこれがお好きな方もいると思われる。
固めだが口どけはすっきりなので、もう少し牛乳が少ない方がいいかもしれない。
寒天1.5倍
予想に反してちゃんと固まってくれている。寒天定量に比べて、ほろほろと崩れる感じ。
従来の寒天のイメージとは違うすっきりとした口どけ感が好印象。
アガー定量
寒天の1.5倍と固さは近いが、こちらの方がプルプル感がある。
口どけが早く、後味とてもすっきりでやはりとてもいい。
アガー1.5倍 (中央上)
プルプル感がさらに増す。
あっという間に口の中でとろけていく感じで、市販のものを思わせる。
ゼラチン定量
スプーンですくうとしっかりして固さを感じるが、口どけはなめらか。
比べてわかる程度にわずかに動物性ならではのゼラチン自体の風味を感じる。
ゼラチン1.5倍
とてもやわらかい。
口どけはアガーと同様に早いが、消えるまでが長く、ゼラチンの味が残る。
凝固剤、濃度の違う6種類の杏仁豆腐を食べ比べてみましたが、予想以上にどれもはっきりとした違いがありました。
口どけの違いは後味に関係していて、寒天とアガーはすっきり、ゼラチンは余韻が残る感じでした。
固さは好みの範疇ではありますが、全体的に水分量1.5倍量の方がさっぱりしていてのどごしがいい印象です。
このあたりはお好みで微妙に調整していくといいかと思いますが、アガーはそもそも定量の方で他に比べて柔らかめでした。
そのせいもあってアガーのくちどけが私の理想の杏仁豆腐に近い感じがしました。
このあたりを加味しまして、固さ(食感)については定量より柔らかく、1.5倍より固めのあたりを狙ってアガー、水分量1.2倍あたりがいいのではという結論になりました。
固さ(食感)について決まったところで、次回は甘さ、風味、濃さについて調整していきます。
今回の反省を踏まえ、いよいよ次回、理想の杏仁豆腐を捉えます。
後編はこちら↓