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暮らしのこと

味噌と出会う (前編)      

2021.06.16

ふっくら炊き上がったごはんに、湯気の立ったあたたかいみそ汁。
これぞ、ほっこりとしたしあわせを感じる“日本の食卓”の基本スタイルです。
お米については以前、銘柄や炊き方についてあれこれ調査してみました。

記事<新米をたのしみたい>

今回はそのご飯の相棒であるみそ汁、味噌についてです。


自分好みの味噌を探して


大豆を主原料とする味噌の歴史は古く、室町時代には現在と同じ味噌の形となって庶民の食生活にも貴重なタンパク源として取り入れられていたそうです。
その種類も豊富で、米味噌、麦味噌、豆味噌といった麹の違いにとどまらず、熟成方法による甘さ辛さや色合いなど実に様々な特色を持った味噌が日本各地で現在も親しまれています。

出身の地域などによって家庭それぞれの定番味噌があったり、中にはご自分で味噌を作られているという人もいると思いますが、今回は自分好みの味噌を探してみたいということで、味噌を専門に扱うお店に行ってみることにしました。




たくさんの味噌がそれぞれ樽に盛られて立ち並ぶ店内は食欲をそそる香りで充満しています。

食べ比べてみたい旨をお店の方に伝えたところ、日本各地の味噌が味わえるお試しセットをおすすめいただいたので、これを中心に今回は全8種類の味噌を味噌そのままとみそ汁とでそれぞれテイスティングしてみます。



お味噌の比較



味噌はふるさとの味、みそ汁はおふくろの味と言われるほど、住む地域や人によって異なる親しみや好みが顕著に表れそうで、今回は岡山県生まれ東京都育ちのごく個人的な親しみや好みが感想に加味されてしまうことをあらかじめご了承ください。
まずはさっそく味噌そのままでいただいてみます。

会津甘糀(あいづあまこうじ)

福島県会津で醸造された米味噌。
米麹を通常の1.4倍使用しているそうで、もっとも甘い味噌としてお店の方におすすめしてもらいました。
味わいはまろやかで確かに甘く、塩味はやさしいので口当たりがとてもいい。
このままでおかずとしてどんどんごはんが進みそうな味です。

信州米糀(しんしゅうこめこうじ)
全国の味噌生産量の40%を占める長野県の米味噌。
昼夜の寒暖差が大きいと麹菌が活発になるそうで、味噌の熟成に適しているそうです。
甘口で塩味もあり、香りも強く、いわゆる味噌らしい味噌の慣れ親しんだ味わいを感じます。

仙台こし
東北地方を代表する宮城県の米味噌。
時間をかけて熟成された赤味噌で、こしてあります。
味わいはまずガツッと塩辛く、そのあとでコクもしっかり感じられます。
普段はどちらかというと白味噌をいただくことが多いのですが、辛口の赤味噌もとてもおいしい。

越後糀(えちごこうじ)
米所である新潟県の米味噌。
米麹の粒が程よく感じられる赤味噌です。
塩辛くもまろやかさを感じる味わいで、同じ赤味噌の仙台こしとも違うとても強い風味です。
そのままでいただくよりはみそ汁や料理に使う方が合いそうです。

麦糀(むぎこうじ)
長崎県の麦麹を使った麦味噌。自家用として作られることも多い麦味噌は別名田舎味噌とも呼ばれています。
麦麹独特の香ばしさで味わいは甘口寄り。
塩味やコクなど全体的なバランスがとてもよく、思ったよりクセがないのでこのままでとてもおいしい。

八丁味噌
大豆だけで長期熟成された愛知県の豆味噌で、こしてあります。
味噌煮込みうどんや味噌カツなど名古屋名物でも使用される有名な赤味噌です。
甘みや塩味よりまず最初にコクを感じ、そのあと時間差で渋みも感じます。
他の味噌とは一線を画す唯一無二の存在感で、とても深い味わいです。

江戸甘
江戸時代中期に普及したとされる東京都の米味噌。
およそ2倍の米麹を使って短期間で醸造された濃い色の赤味噌で、元々料理に向いた仕上がりになっているそうです。
甘く、熟成の進んだ味わいで、あんこのようにすら感じます。
どこかでいただいたことがあるような懐かしさがあって、とても特徴的です。

あわせ
購入した味噌専門店さんオリジナルの10種類以上の味噌をブレンドしたいわゆる合わせ味噌。
産地や麹の違う味噌を混ぜ合わせることによって香りや風味が膨らみ、単品とはまた違った味わいを生むそうです。
塩味をしっかり感じたあと、奥にほんのり渋みや甘みを感じ、複雑だけど整っている深い味わいです。




そのまま各種いただいてみて、率直にどれもおいしく、味わいの違いを堪能できました。

目星をつけていたとおり、個人的には会津甘糀や信州米味糀と言った甘口の白味噌が好みでしたが、例えばシンプルにスティック野菜などでいただく際にはどれかひとつの味噌というよりいくつかの味噌を並べ添えて違いを楽しみながらいただくのがとてもいいのではと思いました。

味噌は空気を抜いて適切に冷蔵庫で保存すれば半年ほどは賞味できる保存食品なので、製法や地域の違う味噌を複数揃えておいて、合わせ味噌のブレンドも試しながら自分好みの味噌を探していくのも楽しそうです。

そして次回はいよいよこの全8種類の味噌をみそ汁にしていただいてみます。

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